今回は、一新塾OBの佐合秀康さんのメッセージをお届けいたします。

佐合さんは、酪農家をお客さんに持つ営業マンです。お仕事を通じて、
若者が実家の農業を継がずに都会へ出てしまい多くの酪農家が辞めていく姿を
見てこられました。
かつて、佐合さんご自身、酪農へ魅力を感じ新規就農することを夢見ながら
ハードルとリスクの高さを心配し、尻込みしてしまった経験があるそうです。

「みんながもっと気軽に酪農をできる仕組みを作ろう!」
佐合さんは、2016年11月に一新塾39期に入塾、仲間と共にチームを立ち上げました。

佐合さんの志を生きる挑戦をお伝えさせていただきます。

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塾生活動レポート

 『誰でも気軽に酪農ができる社会を目指して』

                  一新塾39期・41期 佐合秀康

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●安房は日本酪農発祥の地

 千葉県房総半島の南端、安房は江戸時代に日本で初めて酪農が
おこなわれた日本酪農発祥の地ということをご存じだったでしょうか?

 かつてこの地では多くの酪農家が牛を飼っていましたが、ここ数年
酪農家戸数は減り続けています。

 酪農で大切にするべきものは土・草・牛と言われています。
「土」に育てた「草」を「牛」が食べ、牛乳に変えてくれて人間の「命」を
支えてくれています。また、牛の出す排せつ物は肥料として再び「土」に還ります。
酪農家は土づくりをし、畑を管理して、草(作物)を育てながら、日々、牛が
健康に暮らせるように世話をして牛乳を搾り、さらにその排せつ物もよい状態
を保たなければなりません。

 つまり酪農の仕事は一言で言えば毎日やることがいっぱいで「大変」なのです。


●酪農家が減少の理由は「大変さ」

 酪農家が減少している大きな理由は、この「大変さ」によるものです。
現在の酪農家の平均年齢は65歳と言われています。多くの若い人がこの大変さを
理由にしてあとを継ぐことをしないのです。また若い人が後を継ぎたいと思っても、
親が積極的でない場合もあります、息子や娘に自分と同じ苦労をさせたくないのです。


●酪農は複雑で合理的な科学

 僕自身は都市部のサラリーマン家庭に生まれ育ちましたが、学生時代はよく
森や山へ行き、そこに暮らす植物や動物などの自然のものたちの生理や生態の
複雑さを知ったり考えたりすることに魅力を感じていました。就職して仕事で
酪農に関わる中、酪農も複雑で合理的な科学であるということを学びました。

 また酪農は実際に現場で使われる状態に近い研究がとてもたくさん行われて
いました。たとえば牛のエサを作る畑と作物の土壌学・作物学、食べ物で牛を養い、
牛乳を生産するという栄養学、子牛を生むための繁殖生理学、牛の病気の予防や
治療と言った動物病理学、さらには発酵学や農業経営学も酪農に関わっています。
たくさんの科学者たちが酪農の研究をしてくれています。さらに現場で酪農家自身
が研究したノウハウもたくさんあります。酪農家はそれらを自分の経営に合った形
で実践利用することでよい成果を生み出せます。 


●新規就農への夢

 僕のこれまでお会いした何人かの酪農家も、科学的な根拠と自分の牧場の
分析から、最適な方法を選択して実行することで優秀な経営をされています。
しっかり学び・考え・やるべきことをやればよい結果を出せるという酪農に、
僕も強い魅力を感じて新規就農をすることを夢見ました。

 しかし、今現在に至るまでその想いは尻込みし続けています。一般社会にも
僕のように酪農に魅力を感じ新規就農を希望する方は結構いますが、新規就農
したいと思いながらも、僕のようにそのハードルの高さから尻込みする人も
多いと感じています。


●新規就農のハードル

 新規就農する際にハードルになるものはいろいろありますが、一般的なものは
「お金」と「技術」です。

 まず「お金」ですが、酪農で新規就農をする場合は土地・牛舎・牛・機械など
の営農資産の購入に少なくとも数千万円単位の借入が必要です。パッと借りられる
金額ではありませんし、かなりの覚悟が必要です。また、営農開始後にエサなど
の資材代に充てる運転資金や生活費についてもかなりの額が必要です。つまり、
がんばって、けっこうたくさんの貯蓄をしてから就農することが必要になります。

 「技術」についても必要です。農業一般に言えることですが、作物が作れる技術、
牛が飼える技術と一言で言っても、その技術はエサやり、牛の健康管理、繁殖管理、
搾乳、子牛の管理、病気の予防、牛の取り扱い、飼料作物の種まき、圃場管理、
収穫・・など多岐にわたり、その習得には普通10年単位の期間がかかります。

 さらにそういった農業の技術に加えて、個人事業主としての経営技術や、地域の
人とうまくやっていく技術(?)も身に付けねばなりません。またこれらの技術は
新規就農に限らず親のあとを継ぐ若者にも求められるものです。そしてこれらの
技術の習得は誰か先生が教えてくれたり、教科書で学んだりするわけではなく、
多くの場合、先代の経験と勘がもとになっていて、後継者はそれを見よう見まねで
覚えるのです。その技術の習得が間違っていたり不完全であったりすれば、
土・草・牛のバランスは崩れひどい場合は経営難に陥ってしまうことでしょう。


●一新塾で立ち上げたプロジェクト

 僕は一新塾のメンバーと立ち上げたプロジェクトでこの「大変さ」を取り除く
ために何かできないかと、活動をしました。酪農家が大変だと感じる仕事を軽減
するため、炎天下の中草刈りをやったり、イノシシ対策をやったり、地域美化の
気分が盛り上がるように牧場に花の種を播こうなんてこともしました。

 しかし結論から言うとこういう活動は長くは続きませんでした。誰かがやって
大変な仕事は誰がやっても大変なのです。花の管理だって結構重労働なもので、
続けるためには相当のモチベーションが必要でした。

 一新塾は様々なバックグラウンドの人たちが集まる場です。プロジェクト
メンバーは酪農についての専門知識があるわけではありませんでした。僕は最初
必死になって酪農の大変さをメンバーに話しました。この「大変」な酪農に
関わってきた者として、酪農を「気軽」になんてことは思いもよらず、そういう
言葉を酪農家に対して言うことは失礼じゃないかと思っていました。また大変さを
乗り越えた先に良い酪農経営があるとさえ考えていました。

 しかし一新塾のプロジェクト活動をメンバーと進めるうちに、
「なぜもっと若い人が普通の会社に就職するように酪農を自分の仕事として
選ぶことができないんだろうか?」「酪農も普通の会社のようにお金の問題や
技術、経営の承継を仕組みでカバーできるんじゃないんだろうか?」と考える
ようになりました。


●みんながもっと気軽に酪農をできる仕組みを作ろう

 僕は今までの酪農の常識とは少し違った仕組みを作ることで酪農の大変さを
解決できると考えています。今酪農をしている人も、これから酪農を引き継ぐ人も、
新しく酪農を始める人も、みんながもっと気軽に酪農をできる仕組みを作ろう
としています。仕組みとは具体的には「農業の組織化」です。地域に酪農に
関わる人や企業が増え、それが組織化されることで効率化と合理化さらに
省力化が図れると考えています。
 
 今、館山市で酪農家さんらと共に共同法人牧場の建設を進めています。
この牧場は「地域の産業としての酪農の維持」と「後継者の意欲の創出」を
目的としています。個人経営から会社経営へ移行することで、就労条件の改善を
めざします。大変な作業負担の軽減のために、毎日の搾乳などの作業は出来るだけ
機械にやってもらいます。物言わぬ牛の変化に気が付くことはこれまで酪農家の
重要な技術で習得には経験が必要でしたが、IT機器の導入で経験の浅い人も
牛の状況を正確に把握できるようになります。さらに牛の排泄物処理が与える
周辺環境への影響など、これまで個人経営ではケアしきれなかった部分も注力し
解決することで、地域からあこがれる産業としての酪農を目指しています。

 今は2年後の稼働に向けて施設・設備計画から事業計画、正しい技術に則した
マニュアル作りにいたるまで、牧場の理念を具体的な形にするような細部の検討
を進めています。
 この牧場では酪農に対する熱い思いさえあれば、誰でも、そう、僕のような
尻込みをした人間でも、今より酪農が始められやすくなるようになります。

 また安房の酪農は全国的に見ても規模が小さく、後継者問題も含め今後の継続
はハードルが高い状況ではありますが、この牧場のように意志ある人が集まり、
行政や地域、銀行の協力をもらうことができれば、今がどんな規模であろうと、
これからも酪農を続けていけ、引き継いでいける仕組みのモデルになっていく
と考えています。

 

 

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