「地域主権の確立は鳩山政権の一丁目一番地!」との
鳩山首相の意気込みですが、現時点では“地域主権”の
動きはいまひとつで今後に期待したいところです。

このたび、昨年の一新塾講師であり、
2007〜2009年まで地方分権改革推進委員会事務局長を
担われた宮脇淳氏より新著を一新塾事務局に送って
いただきました。

『創造的政策としての地方分権』 宮脇淳著 岩波書店
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明治維新からはじまり民主党政権下での地域主権戦略会議
の立ち上げまで、地方自治・地方分権の歴史的な変遷の
ポイントを一つひとつその意味を紐解きながら、
脈々と流れる潮流を理解できます。

また、2008年のグローバル金融危機の顕在化以降、
資本主義・市場機能が根幹に組み込まれた日本社会で、
それを克服する創造的政策を支える最も重要な柱は
「強い民主主義」の実現であるといいます。

「強い民主主義」とは、中央集権の上からの民主主主義でなく、
下からの民主主義、下からの公共性の実現のことです。

全国どこでも「中央政府の視点」から必要と判断する最低限の水準を
達成することでなく、全国どこでも「地域の視点」から必要と判断する
最低限の水準を達成することを目指すことです。

グローバル化、少子化・高齢化の進展で、行財政の資源は限られる中、
地域社会を持続的に充実させるには、行政だけでなく企業、住民、NPO
などさまざまな主体が公共性を担う仕組みの構築が不可欠であると提言します。

ご関心ある方は、ぜひ!
3月10日(水)の一新塾講師には、『日本初のバイリンガルろう教育を実践する〜自分たちの手で学校を創る!』をテーマに、学校法人「明晴学園」理事の玉田さとみさんにお越しいただきました。

2008年4月、日本で初めて「手話」と「書記日本語」の「バイリンガルろう教育」を行うNPOろう学校が東京都品川区内に誕生しました。
立ち上がったのは玉田さんをはじめとするろう児の親たちとろうの青年たちです。学校設立に必要な7500万円の寄付金を6ヶ月で集めました。
これまでろう学校では、一般社会での意思伝達を重視し、70年以上、わずかな聴力を手がかりに発声練習を繰り返す「聴覚口話法」が原則でした。

「ろう児にとって母語は日本手話!
 クチパクや身振りではなく、手話で授業をして欲しい!」

耳が聞こえない子どもたちの気持ちにとことん寄り添って、
子どもたちの真のニーズに応えてゆかれた玉田さんの姿勢から
たくさんの気づきをいただきました。

一見マイナスであることも逆から見れば大きなプラスであること。
そして、違いがあるからこそ、新しい可能性や創造が生まれるということ。
さらに、徹底的に子どもたちの思いにとことんアクセスするからこそ、
目的と手段を取り違えることなく、子どもたちの可能性が存分に拓かれる
本来の目的に向かうことが出来ること。

子どもたちの可能性が拓かれる新しい言語、新しい文化の世界を拓くために既成概念に果敢に挑んでいかれた玉田さんの勇気と知恵に心より敬意を表します。

玉田さんのお取り組みは、まさに塾生がこれから社会変革のプロジェクトを展開する上でとても参考になるお手本になります。
どうもありがとうございました。
ここ数年、私は毎月一回、名古屋・大阪・福岡にお伺いしています。そして、地域科の塾生の皆さんと顔を併せ、一回平均5〜6時間のプログラムで、講座・ワークショップ・コンサルティングをしています。

加えて、地域科では、塾生が持ち回りで企画・実行する現場視察を毎月一回実施しています。塾生自らがテーマを設定し「まちづくり」「商店街再生」「フリースクール」「障害者スポーツ」「漁港」など、12月からの3ヶ月で様々なテーマでの現場視察が実施されてきました。

今回は、昨年11月に一新塾第25期に入塾された「大阪」地域科の白川光弘さんの熱い現場視察体験記をお届けいたします。ぜひ、じっくりご覧ください。

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■■■■ 塾生活動レポート
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■■           『 明るい水産業を創る 』
■■             〜岡田浦漁港視察〜
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■■■■                一新塾第25期「大阪」地域科
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 水産を志し大学で学び、大阪市中央卸売市場の水産物卸売会社に就職した。
以来20年以上勤務し、良い時も悪い時も経験した。
 ここ3年程は、営業を離れているが、改めて業界を見渡したとき、地方の
規模漁業者の衰退、資源の減少が気になり始めた。
 一方では、魚離れが進んでいる。消費者の食生活の変化、魚の調理に起因する主婦の魚離れ、骨があることに対する抵抗感、などによって魚の消費は減少してきている。

 これまでの私は、会社の業務にかこつけて、業界の窮状には目を背けてきたが、生産と消費の両方の場面で、水産の衰退が進むのを目の当たりにして、自分が親しみ、今や飯の種とまでなった水産業が衰えていくのはたまらなかった。
 
 きれいで豊かな海を取り戻したい、そして豊かな海の恩恵を受け、漁業者が豊かな生活をできるようにしたい。
 今現在も中央卸売市場で働く私は、生産と消費の流通の中心点に存在し、生産の現場で起こっている事、消費の現場で起こっている事の両方を身近に感じる事ができる。
 こういう立場にいる私だからこそ、水産業の事を真剣に考え業界の仕組みや考え方を変えていく起点になりたい。これまで何もしてこなかった事への罪滅ぼしであり、自分の転換点である。そのころ一新塾を知り、1年以上悩んだ末、昨年11月に25期大阪地域科に入塾した。


●水産業界の現状

 農業、林業が抱える問題と同じ事が水産業でも起っている。収入の問題、高齢化による後継者の問題。そして「魚離れ」による消費の後退。米や野菜で起こっている事と同じだ。何か役に立てる事ができないか。頭の中をグルグル回っている思いを確認するため、現場視察を行った。自分の考えている事や、本やテレビで得た知識が正しいのか。


●早速、現場視察へ!

 昨年末、「漁港を見に行こう」と大阪地域科の同志に現場視察を提案した。興味を示してもらえるのか心配だったが、すぐに有志は集まった。現場は、関西空港を間近に望む岡田浦の漁港だ。

 当日は、朝10時から、漁協の職員の方、漁協青年部長、前青年部長の3名に漁協の現状や、大阪湾の資源状態を話していただいた。

●岡田浦漁協の現状

 現在、漁協の組合員は70名ほど、35〜45歳が多くまだまだ現役バリバリの漁業者が多い。若くて活気のある漁港なのだが将来については不安を持っていた。

「若い人は、ほとんど入ってこない。」
「自分の子供に後を継げとは言えない。」
「資源はどんどん減ってきている。」
「温暖化の影響か、獲れる時期や、量が変わってきた。」
「物価や経費が上がり、一方で魚の値段は下がり本当に大変だ。」

 漁業者の口をついて出るのは、漁業の将来に不安を感じている言葉が圧倒的に多い。事実、大阪湾の魚は年々減っており、昭和60年ごろ10万トンあった漁獲量が近年2万トンまで落ち込んでいる(魚種によっては10分の1)。
関西空港建設、湾岸の埋め立てにより魚の住む場所、産卵する場所が奪われ、海流の流れも変わり、豊かだった昔の海の面影はない。
やはり、漁業者は苦しんでいる。


●現場で知った新しい事

 反面、上手く行っている事もあった。日曜朝市だ。近隣の漁港でも行っているが、都市圏に近い事もあり毎週日曜の朝は、買い物客で賑わう。新鮮な大阪湾の魚が格安で手に入る。漁協は、漁業の収入の減少をいくらか補う事ができる。また、地引網や体験漁業も家族連れに人気らしい。漁業者たちは自分たちの手でできる事を始め、成功事例を積み重ねていた。なんだか、自分の出る幕はないのかと感じ始めた。


●理想の水産業を目指して

 本当に私にできる事はないのか。いやいや、そんなことはない。
 朝市、地引網、体験漁業、海鮮バーベキュー。みんな目の前の海の幸だ。やはり、資源の回復が欠かせない。豊かな海で魚を獲り生活してゆく、そして自然に子供たちが跡を継ぐ。若者たちが集い、新しい力となって漁港を盛り立てる、そういう風景が見られるような水産業を目指したい。
 水産業の未来のために、資源を回復させ、魚食の普及を図る事で収入の安定を目指せないものか。日本の沿岸漁業が元気になってこそ、水産業の未来はあると考えている。


●今後の私

 私は、魚食普及、食育の活動を漁業者と共に進めて行こうと考えている。そして販売価格の維持向上を目指し、漁業者の生活の安定を助けて行きたい。資源回復のため、漁業者と共に考え漁業者の声を行政に届ける役割を果たして行きたい。どちらもすぐに効果の見える事ではないが一新塾の同志の力を借りながら、進んで行こうと思う。

 そのためにも、まずは漁業者の実態を調べ生の声を聞いていきたい。
新しい販売のルートを開拓したい。大消費地大阪を前に地元ブランドを生かしていきたい。そして、資源回復のための活動をしていきたい。

 私がやりたいのは、消費者の魚離れへの挑戦であり、沿岸漁業を復活させることである。そして、生産者、消費者が共に豊かになる水産業を目指す。

 現場視察で「びっくりしてる。君たちの様な外の人が漁業の心配をして
くれているとは思わなかった」と言われたが、私たちの想いが伝わったのかもしれない。この想いを大事にして自分の原点にしたい。
2月24日(水)には、今回は「半農半Xの観点からの地域力再生」を
テーマに、塩見直紀氏に一新塾にてご講義いただきました。

「半農半X(エックス)」とは、「持続可能な農ある小さな暮らしをしつつ、
天の才(個性や能力、特技など)を社会のために生かし、天職(X)を行う
生き方のことで循環型社会を目指す思想です。

1995年頃より塩見直紀氏が提唱され、今では、都心に住む多くの方も
新しいライフスタイルとして「半農半X」に憧れを抱き、そして、
実践者も続々と増えています。
さらに、アジアやヨーロッパにも「半農半X」の理念は広がっています。

当日の講義をお受けして、
モノも情報も溢れる中、自分の根っこを見失いがちな時代にあって
「人のXを発見し、Xをプロデュースしたい」との塩見さんの強い思い。
淡々とご自身の人生の歩みと共にお伝えいただいたミッションは
染み入りました。

9時に寝て朝3時に起きる生活の中、朝の3時間は6時間分の価値と、
本来の自分自身を掘り下げる時間にあて、「天職」と「農ある小さな暮らし」
を深める生き方に大変共感いたしました。

“使命多様性”のお言葉もとても新鮮に響きました。
限られた人たちだけが使命を生きられるのではなく
全ての人たちが使命を生きることができるのだということを
強く実感させていただきました。

京都の綾部の地に多勢の人たちを引き付け続ける塩見さんの言葉の求心力。その言葉は、今を生きる人たちが待望している本質的なものを呼び覚ます力を持っているのではないかと思いました。

いただきましたお知恵を、私たち一人ひとりが、自らの根っこを
掘り下げ、志を果たす道を邁進するための糧とさせていただきます。
2月10日(水)には、
「市民が市民をサポートする“敗者復活”応援事業」をテーマに
ビッグイシュー代表の佐野章二氏にご講義いただきました。

『ビッグイシュー』はホームレスが街角に立って販売する、
ホームレスしか売ることのできない雑誌です。1991年にロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊。ホームレスの救済(チャリティ)ではなく、仕事を提供し自立を応援することがミッションです。

創刊から2008年8月までの5年間で800名が販売者に登録、274万冊を販売、3億2,220万円がホームレスの方々の収入になっている。2007年9月には、自立の第2、第3ステップを支援するためのNPO法人「ビッグイシュー基金」(法人認証08年4月)を設立し、就業を含めた総合的なサポートの実現に向け邁進されています。

ホームレスの方が自立に向けて挑戦するマインドは、佐野さんの
優しさとどんな壁が立ちはだかろうと揺るがぬ信念で挑戦する熱が
伝わったのだと実感させていただきました。

また、“100%失敗する”と言われながらも、市民とともに事業を発展
させてきた、佐野さんの志と不屈の精神に心より敬意を表します。
「本当にやろうと思ったら、反論にひるまず正面から立ち向かう!」
胸に刻ませていただきます。

若者のホームレスが増加について、
「年配のホームレスは胸の中にホームがある。
しかし、若者のホームレスは家庭崩壊で胸の中にもホームがない。」
胸に刺さりました。